大和思想 二章 「自然」と共存する必要性について
それでは、まず、「『自然』と共存する必要性」について説明したいと思います。
私達は、普段、あまり意識していませんが、人間は、「自然」から様々な「恩恵」を受けることによって、「生きること」ができています。
例えば、人間は「食料」、木材等の「原材料」、「エネルギー資源」、「自然」が浄化、無毒化を行なった「きれいな水と空気」を「自然界」から得ています。
また、「微生物」「昆虫」「動物」「植物」の働きのおかげで、作物の栽培に必要となる「土壌の形成」「送粉(花粉を運ぶこと)」「伝染病の防御」、「自然」を維持するために必要となる「種子の拡散」「自然界にある『栄養素』の循環」等が行なわれています。
また、「森林」の機能のおかげで、大雨が降っても「洪水」が制御され、「地滑り」が抑制され、「気候」も一定の範囲内で調整されています。
これらのことから分かるように、私達人間は、「自然」から様々な「恩恵」を受けることによって、「生きること」ができているのです。
さて、人間は、「自然」から様々な「恩恵」を受けることによって、「生きること」ができているのですが、近年、人間による環境破壊が進み、「自然」からの「恩恵」が以前のようには受けられなくなったり、環境破壊が原因による大規模な「災害」が、たびたび起こったりするようになってしまいました。
例えば、「森林」には、本来「保水機能」があり、大雨が降っても「森林」から川に流れ出る水の量が調節されるので、「森林」があれば「洪水」の発生を抑えることができます。
また、「森林」があれば、雨が直接地面にぶつかることを防げるので、「土壌の浸食」や「地滑り」の発生を抑えることもできます。
ですが、無計画な森林伐採によってそれらの機能が失われ、以前は起こらなかったような、大規模な「洪水」や「土砂災害」が、たびたび起こるようになってしまいました。
そして、ときには多くの尊い命が失われ、被害総額も莫大なものになってしまいました。
私達は、自分達の手で「自然」を破壊し、ついには「自然」から「恩恵」ではなく、「災害」を受けることになってしまったのです。
ですが、このような経験や「生態学」等の研究から、「人間が『自然』と共存して生きていく必要があること」が明らかになってきました。
例えば、作物を栽培するためには、「自然」や「多様な生物」と共存する必要があることが分かってきました。
作物によっては、「ハチ」が「送粉」しなければ結実できず、収穫できないものがあります。
この場合、農地の周辺に、「ハチ」が巣を作るのに適した「森林」が必要ですし、「森林」があっても、農地までの距離が遠すぎたら、農地までやってくる「ハチ」の数が減るため、収穫量に影響が出ると言われています。
つまり、この場合、人間は作物を栽培するために、「ハチ」と「森林」と共存する必要があるのです。
また、「森林」は、「害虫を捕食する『昆虫』や『鳥』の住処」でもあるため、農地の周辺に「森林」があった方が、害虫からの防除効果が高いと言われています。
また、作物を栽培する上で重要となる「畑の土」をいい状態にするためには、様々な「微生物」の働きが必要であることが分かっています。
「豊か」と評価される「土壌」の中には、一グラム当たり、一兆個を越す「微生物」がいると言われているのです。
このようなことから、作物を栽培するためには、「自然」や「多様な生物」と共存する必要があることが分かってきたのです。
また、人間が生きるため、人類を存続させるためには、「大規模な自然災害」に対処し、「地球規模での環境の変化」に対応する必要がありますが、そうする上でも、「自然」や「多様な生物」と共存する必要があることが分かっています。
地球上に「多様な生物」が存在している方が、「『気候』や『環境』が変化するスピード」は遅いと言われていますし、逆に、何らかの「災害」後の荒れ地を元の状態に戻すときは、「多様な生物」が存在している方が、「回復するスピード」は速いと言われています。
また、人工的に大規模な自然災害を制御するより、「森林」等の「自然の力」を利用して制御する方が、費用が抑えられることが分かっています。
また、その「森林」をいい状態に保つためには、「森林」に、「微生物」「昆虫」「動物」「植物」等、「多様な生物」が存在している必要があることも分かっています。
このように、「大規模な自然災害」に対処し、「地球規模での環境の変化」に対応する上でも、「自然」や「多様な生物」と共存する必要があることが分かっているのです。
また、人類の歴史を見れば分かるとおり、人間は「自然」の中で進化した「生物」なので、近代以降に現れたものである、「大気汚染」「汚染された水」「騒音」「コンクリートやアスファルトに囲まれた自然のない環境」は、人間には馴染みません。
それらは、人間の「精神」や「健康」を害するものであって、「精神」を安定させるもの、人間を「健康」にするものではないのです。
ですから、心身共に「健康」に生きていくためにも、人間は、「自然」と共存して生きていく必要があるのです。
また、「そもそも『人間社会』が『自然界』の中に存在していること」を忘れてはいけません。
「自然界」の中に、人間が「社会」をつくって生活しているのであって、人間が「自然界」をつくって、その中で動植物が生活しているわけではありません。
また、この「自然界」がある「地球」は、「宇宙」の中に存在している「惑星」です。
つまり、「宇宙」の中に「地球」が存在し、その「地球」の上に「自然界」が存在し、その「自然界」の中に「人間社会」が存在しているのです。
ですから、これらは無関係に独立した存在ではなく、それぞれが互いに影響を与え合い、受け合う関係にあるのです。
ですから、もし「宇宙」に異変が起これば、「宇宙」の中に存在している「地球」はその影響を受けますし、その影響を受けた「地球」で生活している人間も、その影響を受けることになります。
逆に、人間が「科学技術」を乱用し、「自然界」の様々なものを破壊すれば、「生態系」が壊れたり、「大気の状態」や「気候」が極端に変わったり、「地殻の状態」や「地球の運動」が大きく変わったりすることもあります。
そして、その影響で、例えば「地軸」がずれたり、「地球の自転の速度」が極端に変わったり、「火山活動」が極端に活発になったりして、「重力の変化」「地球の軌道のずれ」というような大きな変化が起これば、その影響は「宇宙」にまで及んでしまいます。
そして、「地球」や「宇宙」にまで大きな変化が起こってしまったら、その影響は最終的には、とてつもない「禍」となって人間の上に降り掛かってくるのです。
このように、「人間社会」「自然界」「地球」「宇宙」というスケールが大きなものであっても、互いに影響を与え合い、受け合う関係にあるので、人間が生きるため、人類を存続させるためには、むやみやたらと「自然」を破壊するのではなく、「宇宙の生成発展のメカニズム」に則り、その「調和」を保って生きていく必要があるのです。
また、「倫理的観点」からも、人間は、むやみやたらと生き物を殺さず、彼らと共存して生きていくべきだと言えます。
「動物」をよく見れば分かりますが、「動物」にも人間と同じように「感情」があります。そして、彼らも必死に生きようとしています。
そのような生き物を、人間の勝手な都合で殺すのは「いいこと」ではありません。
ですから、「倫理的観点」からも、人間は、自分達の都合だけを考えて生きるのではなく、「様々な生物」と共存して生きていくべきだと言えるのです。
さて、これらのことから分かるように、人間は「自然」と共存して生きていく必要がありますし、また、そうするべきなのです。
以前は、多くの人が、木材等の「原材料」、「エネルギー資源」、「きれいな水と空気」等の「自然の恩恵」は、「ただ」で「無限」に手に入ると思っていました。
そして、「工業廃水」や「汚染された空気」をそのまま放出し、無計画に「森林」を伐採し、無計画に生物を捕獲し、殺していました。
ですが、その結果、環境破壊が進み、「自然」からの「恩恵」が以前のようには受けられなくなったり、大規模な「災害」が、たびたび起こったりするようになってしまったのです。
ですが、そのような経験や「生態学」等の研究から、「人間が『自然』と共存して生きていく必要があること」が明らかになったのです。
「宇宙の生成発展のメカニズム」を無視し、むやみやたらと「自然」を破壊するという、「世の中の『調和』を無視した生き方」をしていたら、人間は、いずれ、生きることができなくなるのです。
人間が生きるため、人類を存続させるためには、「自然」と共存して生きていく必要があるのです。
ところで、「自然と共存する」と言うと、人によっては、それは、「ジャングルの中で生活すること」だとか、「『人間』と『自然』の間に『対立』が全くない状態のこと」だと思うかもしれませんが、そういうことではありません。
野生の「動物」は「自然」と共存していますが、それぞれの「動物」は、それぞれの生存に適した場所で生活しているのであって、わざわざ、住みにくい場所で生活しているわけではありません。
同じように、人間も、「自然と共存する」といっても、わざわざ住みにくい場所に住むのではなく、人間にとって住みやすい場所に住めばいいのです。
また、「自然界」に、それぞれの生物が生きるための、生物間の「対立」があるように、人間にも「自然」との「対立」があり、それを完全になくすことはできません。
それでは、「自然と共存する」とはどういうことかというと、それは、むやみやたらと動植物を殺さない「優しさ」を持ち、「人間は『自然』から様々な『恩恵』を受けることによって『生きること』ができている」という「自然に対する『感謝』の気持ち」を持って、むやみやたらと「自然」を破壊せず、「自然の調和」を保って生きていくということです。
「『自然の調和』が保たれている状態」とは、固定された一定の状態ではなく、常に、少なからず変化している状態です。
この「自然の調和」を保って生きていくのです。
世の中の全ての人が、このような「生き方」をすれば、「人間」と「自然」の「対立」を最小限に抑え、「自然と共存すること」ができるのです。
人間が生きるため、人類を存続させるためには、このように、「自然」と共存して生きていく必要があるのです。
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